白い少年

 少年は梅雨が明けたころに転入してきた。  季節外れの転入は珍しいことではない。理由は様々だ。  プライバシーの問題があるので保護者に直接は聞けないが、面談の時に世間話を装い聞き出すのがうまい教師がいる。  私にはとてもまねできないが、そんな同僚から情報が入ってくる。  よくあるのは親の転勤だ。なぜか新年度が始まってから…
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 それがいつ生まれたのか、だれも知らない。それ自身も知らない。気がついたら地中にいた。  それは地中を自由に動くことができた。細長い体をくねらせて、蛇のように移動した。不思議なことに、土も岩もそれの移動を妨げることがなかった。まるで土と同化したように、滑らかに動くことができた。  腹がすくと地表に浮かび上がり、先端の口を地面…
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悪人

 ある村にカンダタという男がいた。生まれつき体が大きく、十三歳になる頃には村の大人を見下ろすようになっていた。  ある日、カンダタが山で薪拾いをしていると、藪の向こうから妙な声が聞こえてきた。カンダタにはそれが男女のまぐあいであることがわかった。カンダタならずとも、貧しい山村の者なら、年頃になれば誰でも知ることである。  覗…
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白い帽子

 人は教わらなくても悪を覚える。誰しもその性からは逃れられない。  ショーウインドーに白く浮かび上がるつば広の帽子。それを見たときに少女の心に小さな欲望が芽生えた。  一目ぼれだった。視界の隅でちらりととらえた瞬間、少女はそれに夢中になった。 「私にぴったりの帽子」  まるでどこかの誰かが自分のためにあつらえたの…
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