アウラ アルカナム 1 ウィス(力)

殴られるのはいやだ。 交通事故はもっといやだ。 阿志賀礼児は、小学生にしてどちらも経験済みだった。 そして、どちらも軽々と乗り越えた。 3歳の時だった。 ボールを追いかけて公園から道路に飛び出した。 狭い道路だったのでスピードはあまり出ていなかったが、それでも礼児は5mほど自動車に跳ね飛ばされた。 視界…
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偽説 宮本ムサシ 21 円明

 翌日からムサシは自室にこもり、鍛錬に励んだ。鍛錬の様子は家人(けにん)はおろか高岡佐渡にさえ見せなかった。廊下を通る者に、ムサシの息遣いと刀が空気を切り裂く音が聞こえるのみであった。  食事を運んできた女中は、すり切れた畳を目にした。それを聞いた高岡佐渡は、寝る間を惜しんで鍛錬をしているのであろうと推察した。  共に見た小次郎の姿…
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偽説 宮本ムサシ 20 神剣 燕返し

 佐々木小次郎もまた強さを求める男だった。  彼の場合は、まず武器選びから始めた。  鉄砲は一番威力があるが、一発撃ったら終わりだ。  弓矢は鉄砲に次ぐ威力があるが、矢をつがえるのに時間がかかる。  手裏剣は連射できるが、一発の威力が劣る。  やりやなぎなたは屋内には持ち込めない。  常に持ち運べて、必殺の威力があり…
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偽説 宮本ムサシ 19 佐々木小次郎

 御前試合の二日後に、ムサシは柳生邸を訪れた。前回は表座敷(応接間)だったが、今回は宗矩の私室に通された。これが何を意味するかは、世間に疎いムサシにもわかった。 「御免」  ムサシが部屋に入ると、宗矩は文机で手紙を書いているところだった。 「おお、よく来た。座りなさい」  ムサシが用意してあった座布団に座ると、宗矩は筆を置い…
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偽説 宮本ムサシ 18 秘剣 無想

 御前試合は午前中に一回戦が終わり、十一名が勝ち残った。ただ、勝ってもけがをする者がおり、勝ち残りのうち三名は負傷のため、二回戦に進めなかった。  進めなかったと言うより、進まなかったと言うほうが正しいかも知れない。御前試合に出場するだけで十分名誉なことであるのだ。けがをした状態では十分に戦えないし、無理をして大けがをすれば、剣士…
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偽説 宮本ムサシ 17 御前試合

 ムサシは、東へ東へと、ひたすら歩いた。  早朝、宿を出立し、日が暮れるころに宿に入る。ときには宿を見つけられずに、野宿することもあった。  一刻も早く書状を届けたかった。いや、届けたかったのではない。手放したかったのだ。  友を失う原因になったものを、いつまでもそばに置いておきたくなかった。焼き捨てることも考えたが、それでは…
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偽説 宮本ムサシ 16 襲撃

 世の中には不思議な病気がある。その中の一つに、筋肉が異常に発達するというものがある。ミオスタチンというタンパク質の欠乏から起こるもので、動物に多いが、人間にも発症することがある。子どもなのに大人以上に筋肉質な体になることもある。  ムサシがこの病気だったのかどうかはわからない。だが、幼少より、異様に力の強い子どもだったのは確かだ。 …
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偽説 宮本ムサシ 15 再会

「権之助!」  小走りで角を曲がってきた男は、権之助その人だった。  別れたときとは違ってまげをきちんと結い、こぎれいなはかまもはいている。一見りっぱな町侍だ。だが、角張った顔と人のよさそうなまなざしはそのままだった。  権之助のほうもムサシを見て驚いた様子だったが、すぐに笑顔になった。 「驚かしてやろうと思ったが、やっぱり…
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偽説 宮本ムサシ 14 介者剣法

 ムサシは迷っていた。  目の前には大きな門がある。左の門柱には「尾張家 剣術指南役」、右の門柱には「新陰流 柳生利厳(やぎゅうとしとし)」と大きな表札に書いてある。 「さて、どうしたものか」  ムサシの目は「柳生」の文字を困ったように見つめていた。  今、ムサシは尾張(名古屋)に来ている。町で剣道場の場所を聞くと、一番大き…
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偽説 宮本ムサシ 13 忍

 ムサシは二つの覚悟を決めた。  一つは少々のけがは覚悟すること。なまはんかなことをすれば、かえって状況を悪くする。けがをしてでもこの攻撃を確実に受け止めるのだ。  もうひとつは女を切ること。今のムサシに手加減をする余裕はない。武器の扱いから見て、相手は素人ではない。女、子どもには剣を向けないと決めていたが、もはや禁を破るしかない。…
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偽説 宮本ムサシ 12 三味線

 芝居がかったせりふだな、とムサシは聞いている自分のほうが恥ずかしくなった。  そのくさいせりふを吐いた男は、服装からして浪人らしかった。という事は、おそらく武者修行者か。  わからないのは、なぜおれに挑戦してくるのかだ。なぜおれの名を知っている? 「そこもとの名は?」 「これは失礼いたした。拙者、牛根浩次郎と申す。剣術修行…
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偽説 宮本ムサシ 11 正剣 対 邪剣

 佐霧弥九郎は、伊賀国の下級武士の家に生まれた。特にとりえのない男であったが、手足が長いので剣術だけは有利であった。人に勝つ快感を覚えた弥九郎は、自然と剣に打ち込むことになった。  長じて長身になり、それを生かして剣の腕も上がっていき、道場でも十七歳の時には師範代に次ぐ実力者になっていた。  だが、だからといって弥九郎に未来…
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偽説 宮本ムサシ 10 邪剣 蛇蝎

 ムサシが京都を訪れる半年ほど前のことだ。  吉岡道場の師範、吉岡源左衛門は三条通りを西へ歩いていた。東山にある京都最大の花街、祇園甲部(ぎおんこうぶ)からの帰りだった。  最近父親がやたらと見合いの話を持ってくる。息子に身を固めさせ、道場の安泰を図りたいのだろう。源左衛門は三十近い。いつまでも断ることはできない。ならば今のうち…
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偽説 宮本ムサシ 9 亡霊

 ムサシは困りはてていた。  武者修行のために京都まで来てみたが、考えが甘かった。  京都には吉岡をはじめ名門道場が多数あるが、まず飛び込みの他流試合を認めない。師範がいようが留守だろうが関係ない。一介の浪人など門前払いだ。一見さんお断りというわけだ。  門弟も十分いるので仮入門などもない。というより仮入門という制度すらな…
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偽説 宮本ムサシ 8 心中の鬼

 香宮道場、師範代、香宮清太郎。  対するは  桃井道場、師範代、日下部拓真。  両者の対決は五月十二日、町の東方にある坂田ヶ原で行われた。開墾前の草地であり、見晴らしがいい。試合場には綱が張られ、当事者以外は入れないようになっている。  綱の外側には見物人があふれかえり、人波に押されて中に入ってくる者を、役人が必死で押し戻…
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偽説 宮本ムサシ 7 拓真の決心

 大坂には五つの剣道場がある。  一番大きいのが香宮明智流、香宮道場。師範は香宮清源。  一番小さいのが鏡心明智流、桃井道場。師範は桃井直次。  名前を見ればわかるように、この二つは、もともと同じ流派だった。桃井道場が正当の流れをくみ、香宮道場はそこからさらに分かれた、いわば分家のようなものだった。  香宮清源は先見の明があ…
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偽説 宮本ムサシ 6 師範代代理

 翌朝、桃井はムサシたちと日下部を引き合わせた。桃井は事後承諾になったことを日下部にわびた。 「早退したわたしが悪いのです。気にしないでください」  そういう日下部の目は、複雑な感情をたたえているようにムサシには思えた。  人に頼らざるを得ない自分へのふがいなさ、師範代としての自尊心から生じるムサシへの敵がい心、そういった類いであ…
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偽説 宮本ムサシ 5 道場破り破り

 大坂の町はにぎわっていた。だが、にぎわいの中に、ぴんと糸を張ったような緊張感が漂っていた。  関ヶ原の決着はついたとはいえ、家康に不満を持つ者も多く、出世を夢見る浪人が町のあちこちをかっ歩していた。  彼らのほとんどは豊臣への仕官を望んでいたが、とにかく何でもいいので一旗揚げようといきまいている者もいた。そういう者どうしが道ですれ…
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偽説 宮本ムサシ 4 やり

 秋山道場をあとにしたムサシは、下関を経て本州へ渡った。特に目当てがあったわけではない。諸所で武術家の情報を探して回るつもりだった。  父の無二や秋山道灌に、何人かは教えてもらっていた。京の吉岡、奈良の宝蔵院、そして江戸の柳生。名だたる名人ばかりだ。  ムサシ自身もうわさには聞いていた。だがうわさには尾ひれが付き物だ。会ってみたら大…
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偽説 宮本ムサシ 3 手裏剣術

 家を出るにあたり、姓を養子になる前の宮本に戻した。これまでのムサシではないという気概もあったが、あわよくば新免家との縁を切りたかった。無二には、技量未熟で破れた場合に、新免の名を汚さぬためと言い訳した。  まず西へ向かった。筑前国(北九州)に手裏剣を教える道場があると門弟に聞いたのだ。名前は秋山道場。師範は秋山道灌。古賀という宿…
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